2024年3月1日金曜日

卒業式  式辞

 厳しかった冬が過ぎ、松山城の木々がうっすらと春色をまとい始めようという今日の佳き日に、御来賓の皆様の御臨席を賜り、第75回松山東雲高等学校の卒業証書授与式を挙行できますことは、我々教職員一同、この上ない喜びであり、御臨席を賜りました皆様方に厚く御礼申し上げます。
 また、卒業生の保護者の皆様には、本校入学以来、お子様の健やかな成長を願われての日々だったと思いますが、ある日突然、あれほど好きだった部活動をやめると言ったり、朝ご飯を食べなくなったり、笑顔が消えて無口になったりと、様々な御苦労や御心配がお有りだったと思います。様々なドラマを繰り広げながら、本日、お子様は、艱難辛苦を乗り越えて、晴れの御卒業となりました。心からお慶びを申し上げます。
 ただ今、卒業証書を授与いたしました78名の卒業生の皆さん、おめでとうございます。皆さんの、これまでの学習における頑張りや各種行事、部活動での活躍ぶりを見て、私はいつも感心させられました。特に、最高学年になった、今年一年、体育祭やクローバーディなどで、皆さんは、自分たちの良いところを遺憾なく発揮されました。
 さて、皆さんが踏み出そうとしている社会は、さまざまな分野において、急激な変化や改革が進んでおり、時として戸惑いや焦りを感じることがあるかもしれません。しかし、恐れることはありません。皆さんは、本校で「優しさ」という、誇るべき力を身につけてきました。これから先、「優しさ」はどのようなときも、あなたを助けてくれるはずです。
 昭和の時代に、体の不自由な子供たちのために私財を投じて「ねむの木学園」を建設された、女優の宮城まり子さんは、「ねむの木のこどもは優しいの。病気を我慢して乗り切ったから優しいの。次は人に優しくすることを覚える。優しいことは強い」とインタビューでおっしゃっていました。
 様々な困難や苦労を、心の肥やしとして身につけた「優しさ」は、闘うための武器ではなく、闘わない、争わないための「支え」となるものです。
 これは、本校の重点努力目標、「心に愛と希望と勇気」をの、「愛」と深く関わります。相手への思いやりを持ち、人も、自分自身も大切にする「愛」。そして、どのような他者であっても、その人の苦しみや悲しみを想像することで、結果としての「罪」や「過ち」を許してあげる「寛容さ」。これもまた「愛」であります。
 皆さんは、「愛」を大切にしてきました。そして、他者を思いやり、優しい気持ちで接し、「過ち」を許す広い心を養ってきました。
 これからの社会では、「人間関係を築く力」「人間関係構築力」が重要とされていますが、さらに今、求められているのは「人間関係を元に戻す力」「人間関係修復力」であります。そして、修復していくための手立ては、昨日までと変わらない「笑顔」と「元気な挨拶」です。まさに、人間関係をよりよく築いていく手立てと同じ「笑顔」と「挨拶」です。
 卒業生の皆さん、「笑顔」と「元気な挨拶」を心がけ、心に「愛」を持って、人に優しくしていきましょう。「希望」と「勇気」を持って、社会をより良く変えていきましょう。「東雲レディ」として、人に優しい、ほっとするような、温かみのある社会を創っていきましょう。

 それでは、いよいよ旅立ちの時がやってきました。卒業生の皆さんが本校を巣立ち、新しい世界で、自らの新しい一歩を踏み出されることを、この「東雲」の優しい先生方は、心から応援しています。皆さんのますますの御健康と、洋々たる前途に幸多からんことをお祈りし、式辞といたします。

2024年3月1日
               松山東雲高等学校長  染田 祥孝