2025年3月1日土曜日

卒業式  式辞

 太陽の光が暖かな春の到来を感じさせる今日の佳き日に、御来賓の皆様の御臨席を賜り、第76回松山東雲高等学校の卒業証書授与式を挙行できますことは、私たち教職員にとりまして、この上ない喜びであり、御臨席を賜りました皆様方に厚く御礼を申し上げます。
 また、卒業生の保護者の皆様には、本校入学以来、お子様の健やかな成長を願われての日々だったと思いますが、ある日突然、笑顔が消えて無口になったり、朝ご飯を食べなくなったり、部屋に閉じこもって出てこなかったりと、様々な御苦労や御心配がお有りだったと思います。様々なドラマを繰り広げながら、本日、お子様は、それぞれの艱難辛苦を乗り越えて、晴れの御卒業となりました。心からお慶びを申し上げます。
 ただ今、卒業証書を授与いたしました95名の卒業生の皆さん、おめでとうございます。皆さんは、人を大切にして優しく接し、意見が対立してもそれを乗り越え、一致団結、協力して自分たちの良いところを遺憾なく発揮してきました。また、とりわけ今年は、多くの部が全国大会等に出場するなど、素晴らしい成果を上げていただきました。
 思い起こせば、昨年の冬、私が学校に出勤した朝7時過ぎ、凍るような空気の中で、グランドを猛ダッシュするバレーボール部員の姿を何度も何度も見ました。同じく、寒い冬の夕方、みぞれが降っても、照明をつけながらグランドでボールを追い続けるサッカー部員の姿を見てきました。寒い日も、暑い日も、朝練を続けるアーチェリー部員。急いで朝の礼拝に走っていく姿を幾度となく見てきました。
 重い楽器を運びながら、笑顔で対応する吹奏楽部員の姿。とても素敵でした。もちろんコンクールやマーチング大会での演奏も、見事でした。白い手袋をし、様々な行事で、心を合わせて演奏をするハンドベル部員。奉仕の心をもって、能登への義援金を集めるために街頭に立ってくれたYWCAをはじめとする心優しい人たち。文化部・運動部、同好会、女子力など、皆さんは、本当に頑張ってきました。
 部活が終わった3学期に、やっと余裕のできた昼休み。青春の思い出として、パンを買いたかった人たちが、突然パン販売がなくなって残念がっていると知らせてくれた思いやりのある高校3年生。弁論大会で、女子校の意義を考えたり、親元を離れて本校に来る覚悟や保護者への感謝の気持ちを述べてくれたりした、弁士の人たち。調理実習で作った料理を届け、さりげなく食器を下げに来てくれた心濃やかな人たち。学校行事を成功させるために、裏方として遅くまで残って準備してくれた生徒会の皆さん。遅れることがあっても、あの坂道を上り、日々自分と戦って、卒業を勝ち取ったあなたたち。最後の最後まで、国公立の二次試験に挑んできた、努力家のあの人、この人。今こうして振り返れば、卒業する皆さんが活躍した様々な姿や場面が浮かんできます。私たちは、皆さんからいただいた素晴らしい思い出をこれからも大切にしていきたいと思います。
 さて、卒業生の皆さん。これからも「笑顔」と「元気な挨拶」を心がけ、心に「愛」を育んで、人に優しくしていきましょう。「希望」と「勇気」を持って、社会をより良く変えていきましょう。「東雲レディ」として、人に優しい、ほっとするような、温かみのある社会を創っていきましょう。それが、明治以来138年続く本校の、卒業生としてのミッションです。
 それでは、いよいよ旅立ちの時がやってきました。卒業生の皆さんが本校を巣立ち、新しい世界で、自らの新しい一歩を踏み出されることを、この「東雲」の優しい先生方は、心から応援しています。皆さんのますますの御健康と、前途に幸多からんことをお祈り申し上げて、式辞といたします。

            2025年3月1日  松山東雲高等学校長  染田 祥孝